第4回倫理委員会特別シンポジウム

文化人類学(者)の引き受ける責任/変化の可能性

日時:2023年4月8日(土曜日)13時30分~15時30分(最長30分延長有)

 

会場:Zoomオンラインのみ*当日参加できるのは学会員のみです。

 

プログラム:

    趣旨説明13:3013:40(司会):飯嶋秀治(九州大学 教授)

    発表13:4014:00:松島泰勝(龍谷大学 教授)

「今なお続く、人類学と帝国主義との共犯関係―琉球人骨問題に関する応答と、対等な人間同士の対話を求めた琉球先住民族からの声」

    発表14:0014:20:深山直子(東京都立大学 准教授)

「先住民と研究倫理―アオテアロア・ニュージーランドの場合」

休憩14:2014:25

    コメント14:2514:40:慶田勝彦(熊本大学 教授)

「未来への信頼と継承に向けて—今に回帰し、現前する先住民とどのように対峙し、その声をいかに受けとめたらよいのか

    コメント14:4014:55:太田好信(九州大学 名誉教授)

過去と向き合い、未来にむけた希望をもつために—脱中心化、対話、関係性の再構想

    総合討論14:55-15:30(最長30分延長有)

 

問合せ先:30thethicscommittee[at]gmail.com(@を[at]に置き換えています)

 

趣旨: 問われているのは、文化人類学者であり、またそうなろうとしている私たちの、現在における過去へのむきあい方である。

過去は、個人の内に閉ざされたものではない。今、私たちが実践している文化人類学は、第2回シンポジウム「日本におけるアイヌ民族研究への文化人類学的アプローチ」で確認したように、調査した者たちの過去、調査された者たちとの過去、そこにより沿うはずだった者たちとの過去にも依拠している。

それは第3回のシンポジウム「植民地主義的過去への反省と文化人類学」でも確認された。私たちの調査を成立させ、物の収蔵を成立させ、知の占有を成立させてきた植民地主義や当時の法体系そのものが、私たちを作ってきた関係、モリス=スズキの言う「連累」関係にある。過去は死なず、亡霊のように私たちに、現在の声として、過去を引き受ける姿勢を問うのである。

文化人類学を通じて自らとは異なる文化に接してきた私たちであれば、法的罪が構成されなければ応答可能性が問えず、その外になれば個々の道義へと応答可能性が閉ざされてしまう議論の仕方は倒錯的にも映るであろう。そこで責任という言葉をここではresponse-abilityの原義に戻り応答可能性という意義でとらえよう。

 私たちは問われて、応答可能性を引き受けることもできれば、引き受けないこともできる。当時行われ、現在の私たちの学的環境に寄与してきた植民地主義的状況にどう向き合うのか。過去に育まれてきた私たちが、このまま過去には向き合わず、これからも未来だけを展望する文化人類学が可能なのかどうか。

文化人類学の歴史を紐解けば、その時々に個々の研究教育が別様の探求もし、今現在の人類学的学知の在り方のみが唯一の世界でないのは自明であろう。そこで本シンポジウムでは、今、文化人類学(者)の、応答可能性について今一度問うてみたい。(飯嶋秀治)


松島泰勝20230408日本文化人類学会原稿.pdf
深山直子20230505配布資料.pdf


慶田勝彦20230508最終読み上げweb版.pdf
太田好信20230408コメント.pdf